海のなかには、さまざまな表情がある。どこにでもいるようなおなじみの魚た ちも、じっくり観察してみると、その顔かたちが誰かに似ていたり、動きが落ち着いていたり、せっかちだったりと、個体の違いや行動もいろいろわかってくる
。
また、水中生物はたくさんの知恵をもっている。ハゼとエビの仲間のように、 仲良く同じ巣穴に共生したりするものもいれば、オコゼのようにカモフラージュでまわりの環境に同化しエサを捕獲したり、敵から子を守るため親が卵を口のな
かに入れて保育するネンブツダイなどのような魚もいる。水中は、ダイバーだけが見ることを許された不思議な生命のドラマに満ちあふれている世界なのだ。
そして、一瞬ごとに変化する海。海を育む潮流は、さらに多くのドラマを運ん でくる。たとえば、伊豆半島。毎年、夏から秋にかけて南の海から黒潮にのって伊豆半島にやってくる南方生まれの魚たち。これらは「死滅回游魚」とよばれ、
伊豆沖の水温が15度以下と低くなる1〜2月頃には、越冬ができずにほとんどが死滅してしまう。海の中ではこうした自然の営みがつねに繰り返されているの
だ。
このような水中の自然環境に詳しく、海をあるがままに楽しむ人を「アンダー ウォーター・ナチュラリスト」と呼ぶ。魚だけでなく、サンゴやクラゲ、イルカやクジラなどの水中動物や植物プランクトン、藻といった水中植物に対する造詣
を深めることも、海のメカニズムの一部にふれることになる。
ナチュラリスト・コースは、水中生物の知識から接し方、危険な生物に対する 認識など、さまざまな海洋生物について学べるコース。このコースを受講すると、それまでのファンダイブでは気づかなかった、小さな生物たちのたくましさや
、不思議な生態も再発見でき、潜るごとにダイビングの奥の深さに魅了されてゆく。もちろん、水中生物を傷つけないフィンワークや姿勢など、ナチュラリスト
としてのダイビングテクニックもシッカリ学べる。